1人薬剤師は休憩できない？実態・法律・対策を徹底解説

調剤薬局の中には「1人薬剤師体制」で運営されている店舗があります。

効率的に見える体制ですが、そこで問題になるのが 休憩時間の確保 です。

薬剤師は常に調剤室にいなければならず、患者対応や監査を担うため「1人薬剤師は休憩を取れない」といった声も多く聞かれます。

本記事では、1人薬剤師体制での休憩の実態、労働基準法や薬機法との関係、休憩が取れないことによるリスク、そして働きやすい環境を作るための対策について詳しく解説します。

1人薬剤師体制とは？

1人薬剤師体制とは、その店舗に常駐する薬剤師が1人のみという勤務形態です。地方の小規模薬局や処方箋枚数の少ない薬局で見られることが多いです。

一見シンプルな形態ですが、以下のような課題を抱えています。

• 薬剤師不在では調剤・監査ができない
• 昼休憩中も患者が来局する可能性がある
• トイレ休憩や急な離席すら取りづらい

結果として「休憩が取れない」「常に拘束されている」と感じる薬剤師が少なくありません。

労働基準法における休憩時間の規定

労働基準法では以下のように休憩時間が定められています。

• 労働時間が6時間を超える場合 → 少なくとも45分の休憩
• 労働時間が8時間を超える場合 → 少なくとも1時間の休憩

つまり、薬剤師であっても例外ではなく、労働契約上は休憩時間を与えなければなりません。しかし実際には「患者が来たら対応しなければならない」という業務上の制約があり、休憩時間を自由に取れないケースが多いのです。

薬機法との関係

薬機法上、調剤を行う際には薬剤師が必ず常駐していなければなりません。そのため、1人薬剤師体制では薬剤師が不在になる時間を作ることは原則認められていません。

「薬剤師不在時間＝休憩時間」を設けてしまうと、法律違反にあたる可能性があります。この構造的な制約が、1人薬剤師が休憩を取りにくい最大の理由となっています。

1人薬剤師が休憩を取りにくい現場の実態

常に監査対応が必要

患者がいつ来局するか分からないため、食事中でも対応しなければならない状況があります。

形だけの休憩

シフト上は「休憩1時間」とされていても、実際には電話や窓口対応で途切れてしまうため「実質休憩なし」というケースも少なくありません。

トイレにも行けない？

「薬剤師不在」にならないように、トイレ休憩すら気を遣う現場もあります。結果として心身の負担が大きくなります。

休憩が取れないことによるリスク

ヒューマンエラーの増加

疲労や集中力低下により、調剤過誤が起きるリスクが高まります。

薬剤師の健康悪化

慢性的な休憩不足は、メンタル不調や体調不良の原因となります。

法令違反リスク

形式的に「休憩を与えている」としていても、実際に休めていない場合は労働基準法違反に問われる可能性があります。

1人薬剤師でも休憩を確保する方法

1. 薬局の営業時間を調整する

昼休みに薬局を一時閉局することで、確実に休憩時間を確保する方法があります。患者への周知と理解が必要です。

2. サポートスタッフの配置

登録販売者や事務スタッフだけでは調剤はできませんが、受付や会計を任せることで薬剤師の休憩を取りやすくできます。

3. 複数薬剤師体制の導入を求める

処方箋枚数に対して人員不足であれば、経営者に複数薬剤師の配置を要望することも必要です。

4. 転職を検討する

どうしても休憩が取れない環境が改善されない場合は、労務環境の整った薬局や病院への転職を考えるのも現実的な選択肢です。

1人薬剤師が向いている人・向いていない人

向いている人

• 一人で業務を完結できる責任感の強い人
• 患者対応が少ない閑散薬局でマイペースに働きたい人
• 地域密着の小規模薬局でじっくり働きたい人

向いていない人

• 休憩時間をしっかり確保したい人
• ワークライフバランスを重視する人
• 常にチームで相談しながら働きたい人

今後の1人薬剤師体制の課題

薬剤師不足や経営コスト削減のため、1人薬剤師体制は今後も一定数存在すると考えられます。しかし安全性や働き方改革の観点からは課題が多く、法的整備や業務効率化による改善が求められています。

まとめ

1人薬剤師体制では、法律上の制約や業務の性質から「休憩が取りにくい」という大きな課題があります。

これは薬剤師本人の努力では解決できない構造的な問題でもあります。

休憩を確保するためには 営業時間調整・サポートスタッフの配置・複数薬剤師体制の導入 といった工夫が必要です。

もし改善が難しい場合には、働きやすい環境への転職も選択肢となります。

薬剤師として長く健康的に働くためには、休憩時間を軽視しないことが何より重要です。